2020年2月10日「借地権者の抵抗が垣間見える文書」
東京地裁開札トピックス(20.2.10号)
借地権者の抵抗が垣間見える文書
借地権付建物は競落後に地主との土地賃貸借契約を締結しなければ、その借地権は実質承継されない。競落後は地主との交渉を競落人が自ら行わねばならない。借地権付建物を入札する場合、地主との契約が円滑に進むか否かを三点セット、特に現況調査報告書から読み取る必要がある。1月23日開札では、東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅徒歩2分に立地する借地権付建物が対象になった。土地は近接する神社の所有地を借地したもので面積は約32坪、建物は築29年の鉄筋コンクリート造で地下1階付5階建て(延床面積約142坪)である。この物件の現況調査報告書には数年前に地主からの「意見表明書」があったとして借地人から裁判所に提出があった。その内容は本借地権付建物を現借地人かその相続人が購入する場合以外は借地権の解除を請求するという内容とのことである。これを文字通り解釈すれば競落人は競落後円滑に借地権の名義書替が出来ない恐れもある。しかし、現況調査報告書に書かれた執行官の地主側へのインタビューは賃貸借契約の解除請求については否定的な内容であった。おそらく先の意見表明書は借地人側で競売進行にブレーキを掛けたい意向で地主に作成させたものではないかと推察される。結局裁判所の評価書でもこの意見表明書の内容については斟酌せず作成されている。結果として売却基準価額1億6640万円に対し入札は9本あり、最高価2億4500万円にて競落されていった。