2024年6月3日「住宅融資詐欺の末路の競売」
東京地裁開札トピックス(24.6.3日号)
住宅融資詐欺の末路の競売
先週の本欄ではかぼちゃの馬車事件の話を取り上げたが、その後社会問題となったのが、フラット35の悪用事件である。全期間固定金利での住宅ローンフラット35は自住用住宅に限って利用される住宅融資である。しかし、数年前この有利な住宅融資を賃貸収益目的の物件購入者に利用させ不当に高い価格で販売し、大きな利益を得る会社が横行した。そこでフラット35の債権者である住宅金融支援機構はこういった不当融資利用の債務者に対し融資金の一括返済を求めている。
5月15日開札では京急本線「立会川」駅徒歩約4分に立地する専有面積約15坪のテラスハウスが開札対象となったが、この物件がまさにフラット35不正利用物件であった。
この物件は約7年前に分譲されたが、フラット35利用で代金支払い、所有権移転の同日に売主会社が借り上げているのである。まさに確信犯と言える不正利用である。またこの物件の構造は軽量鉄骨造で、棟割り長屋形式で分譲されたもので、通常のマンションと比較すれば流通価格がかなりディスカウントされる。しかし、分譲価格は抵当権設定金額から推して4500万円程度と思われ、分譲当時の通常の新築マンション並みの価格であった。売主はかなりの売却益を得たであろう。
この物件の売却基準価額は2464万円であったが、これに対し入札は僅か1本に止まり最高価2714万円にて個人が落札していった。軽量鉄骨造で棟割り長屋(テラスハウス)ということでマンション再販業者は入札を敬遠したものと思われる。売りにくい物件を高く売った詐欺的手法の末路の競売である。まだまだこのフラット35不正利用由来の競売は出現するであろう。