2024年2月12日「複雑な占有関係演出か」
東京地裁開札トピックス(24.2.12日号)
複雑な占有関係演出か
東京の転入超過が2年連続との報道があった今日この頃、都心のマンション価格の上昇も続いている感がある。バブル時代のようなマンション相場であるが、その頃競売物件には占有屋が跋扈していた。多くの占有妨害は、占有者が特定できないように占有者を入れ替えるか、複数の占有を主張する方法が多かった。競落者が引渡命令を誰に対して行うべきか特定できないようにするのである。
さて1月31日開札では東京メトロ南北線「麻布十番」駅徒歩約2分に立地する築19年弱で専有面積約17坪のマンションが対象であった。このマンションの現況調査報告書を見ると所有者から10社以上の法人が共同占有している旨記載されており、各法人は法人登記上も所在はこの物件のようである。しかし、物件明細書ではそれら会社の占有は認めず、あくまで所有者占有という判断が記載されている。売却基準価額はその前提で6307万円に設定され、これに対しこの日一番の29本の入札があり、最高価1億1200万円にて競落されていった。
この物件、現況調査時点では確かに占有実態が無いようであった。しかし所有者は10数社のうちの1つの法人に賃貸している旨申告していて、しかもその占有開始時期は抵当権設定前との申述になっている。虚偽の可能性もあるが、気になるのは執行官が電気・水道などの名義等の確認を行った旨の記載がないことである。バブル時代、港区の物件には先に記したような競売妨害が特に多かった記憶があり、この物件も競落後の占有排除に不安が無いではない。バブル時代の占有妨害が思い出される。