2023年5月15日「土地利用無権限建物に入札3本」
東京地裁開札トピックス(23.5.15日号)
土地利用無権限建物に入札3本
競売市場には特殊な権利関係の物件の出現率が高い。しかし、4月26日開札で土地の利用権原が無い建物で且つ築33年にもかかわらず建築確認を取らずに建てられた物件が対象になっていたのには驚かされた。東武東上線「東武練馬」徒歩約8分に立地するこの物件、敷地については前地主の建物収去土地明渡訴訟が確定(終局)しており、この判決を承継した現地主が本競売の申立人となっている。
この物件の評価書を見ると敷地約19坪の評価はゼロであった。敷地利用権無しであっても「場所的利益」として更地価格の1割程度は評価されるケースが多いが、本件は明らかな無権原ということで、評価ゼロである。売却基準価額は建物(木造3階建て)の積算価格のみで33万円を売却基準価額としされている。
こういった低評価の競売では、執行費用(現況調査、評価などに要する費用)を賄えず競売自体が「無剰余取消」になるのが原則である。しかし、競売申立人である現地主は民事執行法第63条第2項第1号の申出(130万円未満の入札を無効とし、入札が無ければ申立人が130万円で買い受ける。)を行い競売続行させた。
おそらくは申立人である現地主はこのような建物に130万円以上の入札は無いと思っていただろう。そうなれば130万円で対象建物を取得でき、土地の完全所有権を取得できる。建物収去土地明渡訴訟での執行費用を考えてこの方が得と考えたように思う。ところが実際には3本の入札があり、個人が最高価251万円で競落した。申立人としては、土地の使用損害金は回収できるものの、競落人相手に再び法的手続きを行わざるを得ない。困ったことと捉えているかもしれない。
こんな物件にも応札があるのが今の競売市場とも言えよう。