2023年4月10日「倉庫としての占有、対処の難しさ」
東京地裁開札トピックス(23.4.10日号)
倉庫としての占有、対処の難しさ
平成バブル崩壊の時代、競売不動産には多くの占有屋が跋扈していた。差押えから競売入札まで今より相当長い時間を要していたため差押え後の占有者の入れ替わりも多かった。
近時は競売の処理時間も短縮され、また執行官のインフラ(水道名義など)調査権限の拡充もあり、不法占有は減少していると思う。明渡や賃借権の継承などを競落人はしやすくなったと言えるだろう。
しかし、賃借人などが占有している場合は占有状態がはっきりしているが、所有者が利用しない状況で放置されている場合は、占有者との明渡交渉が難しい場合が多い。
前述の場合、大方所有者とは連絡が取れず、任意の明渡交渉を行えないケースが多い。ただ対象物件内に動産などが無い「空室状態で占有」の場合は実務的には所有者への通知後、返信無ければ管理会社など第三者立会など行い占有を確保するケースが多いだろう。しかし、3月14日開札で対象となったJR山手線「高田馬場」駅徒歩3分の築44年の1Rマンションは、現況調査報告書では「所有者が倉庫として占有」となっていて、多くの動産の存在が確認されている。こういった場合占有確保と動産処理については、場合によって引渡命令を申立てた上での明渡の強制執行を要するだろう。
さらに、競売妨害として、まったく関係ない第三者が架空の占有を主張してくる余地もある。利用実態が不明の所有者占有の場合は占有確保に予算を取らねばいけないように思う。
ちなみに先の物件の入札結果は売却基準価額832万円に対し20本の入札があり、最高価1366万円強で落札されていった。