2021年11月1日「取引事例価格と積算価格の乖離」
東京地裁開札トピックス(21.11.1日号)
取引事例価格と積算価格の乖離
通常中古マンションの価格査定を行う際、宅建業者は近隣類似の取引価格を主にその根拠とする。しかし東京地裁の競売物件の評価は、建物は再調達原価から経年減価を算出し求め、土地を公示価格水準での敷地価格を土地共有持分で乗じて求めたものの合計額の積算価格を主として採用している。これは一戸建ての評価手法と同じである。また積算価格に加えて想定賃料から収益還元で求める収益価格も評価額の参考としているが、この手法の場合ファミリーマンションではかなり低額に導かれる傾向がある。
マンションは実際の取引価格は上記の積算価格を大幅に上回るケースが多い。競売中古マンションが売却基準価額に対し大きな上乗せ率で競落される原因である。
10月20日開札で京急本線「大森海岸」駅徒歩約7分に立地する築47年の専有面積約13坪の2DKのマンションが対象となった。このマンションには同棟内の他住戸の成約事例があり、それによれば成約の専有面積坪単価は約270万円である。これを対象マンション住戸に当てはめると約3500万円程度の成約価格も考えられる。仮に競売であるからこの価格の50%としても約1750万円の売却基準価額としてもおかしくない。しかし、この物件の売却基準価額は970万円であった。結果37本もの入札があり、最高価2347万円で再販業者が競落していった。東京地裁もマンション評価では取引事例比較法を採用した方が良いのではないだろうか。