2020年12月7日「東雲タワーマンションに63条2項申出額」
東京地裁開札トピックス(20.12.7号)
東雲タワーマンションに63条2項申出額
競売には抵当権や根抵当権などの担保権実行で行われるいわゆるケ事件と裁判や和解調書もしくは公正証書に基づく競売のヌ事件の2通りがある。ヌ事件の場合、差し押さえた不動産は先に抵当権等が設定されていると、債権者はその後順位として、先の抵当権者の債権の配当の後に配当を受けることになる。11月18日開札での東京メトロ有楽町線「辰巳」駅徒歩約11分に立地する築11年強のタワーマンションがこのヌ事件であった。専有面積約21.5坪の2LDKの部屋が対象で、第1番に住宅金融支援機構が債権者の抵当権が設定されている。フラット35と呼ばれる住宅ローンと思われるが、こちらの方は返済の延滞がないのか、差押えになっていない。しかし、他の債務があり、その債権者のうち1社が裁判を経由して差押えし、競売に至った。ただこの物件の買受可能価額(売却基準価額の8割相当で最低売却価格)で仮に競落された場合、差押え債権者に配当が回らないと見られる。というのはこの物件に民事執行法63条2項の申出額4183万円が設定されていることからそれが分かる。この申出額は当該差押え債権者に配当が生ずる最低限の価格であり、その額を上回る入札が無い場合は差押え債権者が当該申出額で買い受ける約定のもと競売が実行されているのである。マンション相場が堅調であることでこういった案件も出てくる。結果は入札24本が集まり、最高価5500万円にて競落された。差押え債権者には相当額配当されるだろう。