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2020年6月8日「明渡猶予は短期賃借権廃止の代わり」

東京地裁開札トピックス(20.6.8号)

 

明渡猶予は短期賃借権廃止の代わり

 

東京地裁では7月19日開札まで取り消されていて、8月19日開札分からの再開が予想される。そんな中この期間を使い競売の一般手続きなど解説する。

まずは短期賃借権についてである。2003年に民法等が改正され、短期賃借権が廃止された。これについて実務的に買受人に一番効用があったと思われるのが、従来の短期賃借権の中でも期限の定めの無い短期賃借権であった。通常の短期賃借権者は契約期間が定まっており、契約期間経過後は、引渡命令が発令される(ただし、代金納付後6ヶ月以内に限る。)こともあり、明渡し確保の目途がつきやすい。しかしこれに対して、契約書の書替を行なわず賃借人が従前賃料を支払い続けているケースは同じ短期賃借権でも「期限の定めの無い賃借権」となる。この場合は当該賃借権者に対しては引渡命令が発令されない。それではどうやって明渡しを確保するかと言えば、先ず6ヶ月の事前予告期間を定め解約の申し入れを行なう。賃借人がこれに従えば良いが、従わない場合は引渡命令が発令されない以上明渡しを求める訴訟を提起せざるを得ないことになる。訴訟となれば、判決の取得から強制執行に入れるまで少なくとも4ヶ月は掛かる。しかも、中には期限だけでなく相手、つまりは賃借権者が特定されていないこともあり、そうなると相手方の特定に保全処分などを要することがあり、更に時間と経費が掛かることになる。こんな厄介な短期賃借権であったが2004年4月1日入居以降の占有者についてはこういった改正法が適用され引渡命令の途が拓かれた。

 代わりに出来た明渡しに関する6ヶ月の猶予制度では、先の例でも6か月間引越しは猶予されるもののもし占有者がこの間建物使用対価を買受人に1ヶ月でも支払わなければその時点で引渡命令が発令される。

 ただし、2003年3月31日以前に入居した賃借人は旧法は適用されるので先の問題はまだ一部で残っているので注意をしたい。

 

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