2020年3月2日「借地権付建物共有物分割競売」
東京地裁開札トピックス(20.3.2号)
借地権付建物共有物分割競売
高齢化社会は多死社会であり、相続問題が増加する社会でもある。遺言書があるか、相続人同士の話し合いが纏まれば、被相続人の財産はうまく分割が可能であるが、そうはいかないケースが多いのは周知のことだ。被相続人の財産のうち不動産、特に借地権付建物は地主の承諾も必要であり、処分と分割には難しい面がある。2月13日開札では東武東上線「上池袋」駅徒歩約5分に立地する古家が借地権付建物として対象になった。敷地は寺が所有する300坪以上の土地の一部の約25坪で、その上に築60年程度の古家が建っている。借地人が逝去し、誰も住まなくなり、地代(月額13600円)も半年以上滞納している状況である。建物は1昨年おそらく娘と思われる2人に相続され登記も完了している。しかし借地権の名義変更はなされていない。この姉妹で協力して地主に譲渡承諾を得て売却などできれば良かったが、結局話が纏まらなかったと見え、共有物分割訴訟を経て今般の競売に至っている。競売であれば相続人2名は顔を合わせることなく処分、分割ができる。ただ競落人が現れる価値を持たなければ絵に描いた餅になる。幸いなことに本件は立地が良くまた公道(42条2項)面でもあって売却基準価額1399万円に対し入札11本を集め2070万円にて競落された。地主が寺であり、介入権行使(借地権の買戻しの権利)がなされる心配が低いことも多くの入札を集めた要因かと思われる。これからの社会ではこういった相続に絡んだ換価競売は増加していくことだろう。